| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-069

亜寒帯林床草本における空間分布決定要因の種間比較

*饗庭正寛,日野貴文,日浦勉,北大・苫小牧研究林

近年、植物の群集形成における環境制限と散布制限の相対的重要性の評価を目的として、冗長性分析(RDA)を用いた分散分割が、様々な植物群集を対象に行われてきた。これらの研究は、多くの植物群集の形成において、環境制限と散布制限の双方が重要な役割を担っていることを示してきた。このような結果は個体群レベルでは、(1)多くの種の分布決定要因として、環境制限と散布制限の双方が重要、(2)ほぼ環境制限によって分布が決まる種から、ほぼ散布制限のみによって分布が決まる種までひろく存在する、という2つの異なる状況から生じうる。これら2つの状況を判別し、群集形成過程における環境制限と散布制限の影響をより深く理解するために、北海道大学苫小牧研究林に127の調査区を設けて植生調査を行った。得られた植生データを対象に、光量、土壌成分などの環境要因とPrincipal coordinates of neighbor matrices 法により生成した空間要因を説明変数として、群集と個体群の2つのレベルで各説明変数の寄与率の不偏推定値を得た。その結果、群集レベルでは、環境要因の寄与率が7.0%、空間要因の寄与率が2.0%、判別不能な寄与率が3.1%であった。12.1%というモデル全体の寄与率は、先行研究より著しく低く、調査地の森林の歴史の浅さを反映している可能性がある。2つの要因の重要度は種ごとに大きく異なり、一例を示すと、アキノキリンソウでは環境要因の寄与率が31%、空間要因の寄与率が0%と環境要因の効果が卓越する一方で、ウマノミツバでは環境要因の寄与率が3%、空間要因の寄与率が10%と空間要因の効果が上回っていた。今後の解析により、これら個々の種の分布の決定機構が、種子サイズや散布様式、草丈といった形質から予測可能かどうかを検証する。


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