| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-084

不均質な栄養分布のコントラストとスケールがクローナル植物のジェネット間競争に及ぼす影響の解析

*松嶋麻由子,可知直毅,鈴木準一郎(首都大・院・理工)

一部のクローナル植物では、栄養塩分布が均質な場合よりも不均質な場合に成長量が大きいといわれている。さらに近年、栄養塩パッチのスケールやパッチ間のコントラストによって植物の反応が変化することが示された。しかし、そのような栄養塩分布パターンがクローナル植物の個体間競争に及ぼす影響に関する報告はない。そこで、不均質な栄養塩分布のスケールやコントラストはクローナル植物のジェネット間競争に影響を与えるという仮説を検討するため、2つの栽培実験を行った。

材料はカキドオシの2ジェネット(斑なし、斑あり)を用いた。実験1では栄養塩パッチスケールの1要因(5水準;0、2、4、16、64パッチ数/50 cm x 50 cm栽培容器)を設定した。10反復を80日間栽培した。実験2では栄養塩パッチコントラストの1要因(3水準; 0:100、25:75、50:50)を設定した。8反復を60日間栽培した。パッチ数0の処理とコントラスト50:50の処理は栄養塩分布が均質な条件である。全処理で2個体を1つの栽培容器内で栽培し、個体ごとに各パッチの地上部、地下部重量を測定した。

2個体の個体重の合計は、パッチスケールが大きいと有意に小さく、スケールの小さい条件の個体重は均質な条件と有意差がなかった。一方、パッチコントラストの影響は認められなかった。また、容器内の優位個体と劣位個体で個体重を共分散分析した結果、スケールの影響が有意だった。2個体の個体重の関係がスケールによって変化したので、不均質性のスケールがカキドオシの競争関係に影響を及ぼすと考えられる。さらに、各個体の重量は、斑なし個体ではスケールに影響され、斑あり個体ではコントラストの影響を受けた。これにより、ジェネットによって、反応する不均質性のパターンが異なる可能性が示唆された。


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