| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-182

ハイマツの結実変動

森広信子(無)

非常に多くの樹木が、その結実量を、個体間で同調して年変動させる。結実量変動の大きさは送受粉様式・種子散布様式と深く結びついているように見える。たとえば風媒花は他の送受粉様式の樹木に比べて結実変動が大きく、これは同調開花によって受粉効率が上がり、同調から外れて開花すると受粉がうまくいかないという背景があるのではないかといわれる。

ハイマツは本州中部の高山を代表する低木である。風媒花を持ち、種子はホシガラスなどの動物による、貯食行動によって散布される。ハイマツの球果生産については、中新田(1995)による、球果の落下痕を用いた推定があり、15年間で変動係数は0.71であった。これは変動量としてはそれほど大きいものではない。

種子は主に風衝地に貯蔵され、そこから翌年に実生が発生するが、この数を15年間数えたところ、非常に大きな発生数の変動があり、変動係数は1.52となった。変動パターンは不規則で、周期性は認められない。

球果数の変動に比べて、実生の発生数が非常に大きく変動するのは、種子の生き残る確率が、種子量が多いほど大きくなる、つまり貯蔵した種子を消費する割合が、種子量が多いほど少なくなることを意味する。したがって、ハイマツが種子生産量を変動させることで、貯蔵種子の生き残りには一定の効果があることになり、それは種子(球果)生産量の変動をあまり大きくしなくても達成できることを意味する。


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