| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-193

雌雄異株植物ヤチヤナギのオス化した小集団のクローン構造

*井上みずき(秋田県立大・生物資源),石田清(弘前大・農)

雌雄異株植物は全植物の約4%を占め、1個体では繁殖できないにも関わらず隔離された島に多いとされ、その要因は個体の寿命が長いことや鳥に種子散布をたよる種が多いからだといわれている。湿地性の潅木である雌雄異株植物ヤチヤナギは然別湖(北海道)、御池沼沢(三重県)や黒河湿地(愛知県)に隔離小集団が存在し、これらの小集団でみられる開花幹はオスのみである。ヤチヤナギは匍匐枝によってクローン繁殖するため、これらの隔離小集団は少数のジェネットにより侵入拡大もしくは雌雄を含む大集団から確率的偶然により少数のジェネットのみに固定している可能性がある。そこで3集団のクローン構造を解析した。然別湖は30m*30mのプロットを設置し、2mの格子点上で葉を採取した(236ラメット)。御池沼沢は12m*6mおよび20m*8mのプロットを設置し、2mの格子点上で葉を採取した(63ラメット)。黒河湿地は全64ラメットから葉を採取した。採取した葉からDNAを抽出し6座のマイクロサテライトマーカーを用いてジェネットを識別した。然別湖および御池沼沢では、集団は1ジェネットから成り立っていた。ただし、然別湖は体細胞突然変異と推定される遺伝子型を1タイプ持っていた。一方、黒河湿地は集団の面積は一番小さいにも関わらず、5ジェネットが見つかった。3集団の結果は仮説を支持するものと考えられる。また、黒河湿地についての結果は確率的偶然以外の要因が小集団のオス化に関与していることを示唆している。変種の関係にあるセイヨウヤチヤナギでは雌雄の花が花序内に同所することがあると報告されている。然別湖でも一部の幹で雌花が観察された年があり、こうした性転換が集団中に広まる条件について検討していく必要がある。


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