| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-202

アカガシとイヌガシの分布上限域における結実量

*澤田佳美(東京農大・院・林学), 金田考示, 丸山久美, 武生雅明, 中村幸人(東京農大・地域環境), 吉田圭一郎(横浜国立大・教育人間科学), 磯谷達宏(国士舘大学・文)

暖温帯常緑広葉樹林の優占種であるアカガシとイヌガシでは分布上限に向かうにつれて、種子生産が低下するのではないかと考え、箱根の函南原生林と三国山で検証した。アカガシは標高600、800、1000m(分布上限)においてDBH約50cmの個体を、イヌガシは標高600、700m(分布上限)においてDBH約25cmの個体を各3個体ずつ選定した。選定した個体の樹冠下にシードトラップを設置し、2007年〜2009年の7月〜12月にかけて種子を回収した(7、12月は月に1度、 8〜11月は月に2度)。全種子数をカウント後、無作為に選定した100個について種子の状態を調べた。また、損傷の無い種子 30個について、長さと幅をノギスで測定後、乾重量を測定した。

アカガシでは年間の総落下種子数には標高間で顕著な差はなかったが、高標高ほど7〜9月に未熟種子数が多かった。イヌガシでは年間の総落下種子数が標高600mに比べ標高700mで激減した。ただし、未熟種子の割合には標高間差がなかった。種子の成熟速度は両種共に高標高ほど遅かった。アカガシの種子サイズは、標高600mでは11月上旬に最大値に達するが、標高800mでは同等のサイズに達するのが標高600mより2週間程遅れ、標高1000mではそのサイズに達しなかった。イヌガシの最終的な種子サイズは標高による差はなかった。以上のように、両種共に分布上限では成熟種子の生産量が大きく低下することが明らかになった。そして分布上限域のアカガシでは種子の成熟が制限されているのに対して、イヌガシでは開花〜受精の過程で制限を受けていることが示唆された。


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