| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-235

カワウとサギと釣り人の分布変化〜アユをねらう三者の相互作用〜

*熊田那央,有馬智子,藤岡正博(筑波大・生命環境),本山裕樹(NPO法人バードリサーチ)

河川においてカワウによる放流魚の採食が問題とされている。山梨県甲府盆地内を流れる河川ではアユの天然遡上はほとんどなく、カワウの採食場所はアユ放流や釣りの解禁といったイベント前後で変化することがわかっている。一方で、放流アユを利用するのはカワウだけではない。同様に魚を食べるサギ類や釣り人も共通の資源を利用する。このような種間では競争という負の作用と、お互いの存在を利用することで資源の発見確率や採食効率を高めるなどの正の作用の両方が働く。カワウの採食分布にはこのような種間相互作用も影響していると考えられる。本研究ではこれらの種の分布パターンに種間相互作用が存在するのかどうか、あるとすればカワウの分布にどのように影響しているのかを明らかにすることを目的とした。

調査は山梨県甲府盆地にある唯一のカワウのコロニーから半径20km以内の河川で行なった。調査範囲の主要な河川を車や自転車で踏査し、カワウやサギ類(アオサギ、ダイサギ、コサギ)、釣り人の位置や行動を記録した。調査は2009年4月から12月にかけて19回行なった。

1回の調査でカワウを107 ± 65 SD羽、アオサギを36 ± 20羽、ダイサギを36 ± 24羽、コサギを31 ± 34羽、釣り人を19 ± 18人発見した。調査開始からアユ釣りが終了する9月頃までは個体数に大きな変化はなかったが、それ以降、釣り人はいなくなり、カワウやサギ類の個体数は増加した。また、調査範囲をスケールの異なる複数のメッシュに区切り、各メッシュに含まれるカワウと他種の個体数の関係をみたところ、調査前半(4月〜6月)のカワウの分布とダイサギ、アオサギの分布が幅広いスケールで一致する一方で、釣り人の分布とカワウの分布は一致しないなど、放流アユを共通の資源とする三者には種間相互作用がみられた。


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