| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-239

mtDNA解析を用いた北海道東部におけるヒグマの遺伝的構造

*伊藤哲治(日大・生物資源・森林動物),中山秀次(日大・生物資源・森林動物),小林喬子(東農工大・院・連合農),佐藤喜和(日大・生物資源・森林動物),間野勉(北海道環境研)

北海道のヒグマ(Ursus arctos)は, mtDNAのコントロール領域の解析により, 17種類のハプロタイプ(Ht)を有することが明らかとされており,3つの分子系統グループに, 地理的に別れて分布していることが報告されている.これらの分布パタンはmtDNAが母系遺伝であり母方のmtDNAのみ受け継ぐこと,メスは出生地付近に行動圏を形成し,オスに比べて長距離の移動分散をしない行動の特徴を現しているものと考えられる.北海道東部阿寒白糠地域は,メスのHtから,白糠丘陵の西部と北東部で2系統(クラスターA:HB02,クラスターB:HB13)のHtの地理的分布が確認され,両クラスターの分布境界線に位置することが明らかとなった.しかし,HB2について,メスは道央に,オスは道央・道東に広く分布しており,詳細なHtの分布を言及することは難しい.そこで,mtDNA コントロール領域5’側の一部にチミンの反復数に多型が確認されており,道央・道東に広く分布しているHtにおいても,メスが異所的であれば個体群の分布および移動オスの出生地を明確に判別することが可能であると考えられる.そこで,阿寒白糠地域およびその北部と東部にて有害駆除および学術捕獲されたヒグマの組織 (1996-2008年:約300個体)を用いて,チミン反復数を考慮したmtDNA多型解析をおこない,その分布を調査した.その結果,阿寒白糠地域の白糠丘陵の西部と北東部では,メスのHtの分布に異所的な分布が明確に確認されたが,その北部と東部では,メスのHtの分布に明確な異所的分布は認められなかった.


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