| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-240

植生データを用いた森林棲コウモリ類の生息適地予測〜栃木・茨城における試み〜

*渡邉眞澄(東京農工大・農), 津山幾太郎(森林総合研究所), 安井さち子(つくば市並木), 上條隆志, 吉倉智子(筑波大学・院・生命環境), 松井哲哉(森総研・北海道), 丹羽忠邦(茨城県), 梶光一(東京農工大・農)

人工林の増加や自然林の減少などの景観改変は、森林棲コウモリ個体群の減少の主な要因になると考えられる。そこで本研究では、栃木県・茨城県内を対象とし、森林棲であるヒメホオヒゲコウモリおよびコテングコウモリを中心に、種ごとの分布と主に現存植生との関係を一般化加法モデル(GAM)を用いて解析し、生息適地の予測を行った。

GAMの説明変数には、人工林、二次林、自然林または自然林に近い森林(以下、自然林)、暖かさの指数(WI)を用いた。植生データは、捕獲地点を中心とした直径1,3,5km円バッファ内の植生区分の割合を算出して用いた。目的変数には、両種の夜間捕獲記録の有無データを使用した。その際、有データはそのまま使用し、無データについてはブートストラップ法によって、基データと同数の100セットのデータを抽出した。これらのデータを用い、モデル構築は種ごとに100回行い、各試行回ごとにステップワイズ法による変数選択を行い、変数ごとの選択頻度を記録した。

ヒメホオヒゲコウモリのモデル構築において選択頻度が高かった主な要因は、1km円内の自然林率、1km円内の人工林率、WIであった。一方、コテングコウモリにおいては、主な要因はWIのみであった。得られた潜在生息適地マップを元に、2県内における生息適地の面積を算出したところ、ヒメホオヒゲコウモリの生息適地は2県全域の4.1%を占め、コテングコウモリの7.5%に比べ地域が限定されていた。これは、ヒメホオヒゲコウモリが立ち枯れ木や大径木などの、人工林や二次林には比較的少ない資源をねぐらとすることと関係していると考えられる。


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