| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I1-06

ハワイ諸島のギンネム林における在来植物の更新阻害

*吉田圭一郎(横浜国大・教育人間),Daehler, C.C. (Univ. of Hawaii, Botany Dept.)

近年,移入植物の対策では移入植物の種特性(invasiveness)や他の地域での侵入実績によるリスク評価が用いられてきた.しかし,在来生態系に対する移入植物の影響は同一種であれば全ての地域で同じなのだろうか?

このことを検討するため,同一の移入植物による影響の地理的な比較が有効である.そこで本研究では,琉球列島や小笠原諸島における既存研究との比較を目的として,ハワイ諸島オアフ島におけるギンネム Leucaena leucocephala の生物学的侵入について明らかにした.

オアフ島では低標高域の人為攪乱の跡地を中心にギンネム林が分布した.ギンネム林の成立から30年以上経過した二次林を対象に,28箇所の調査プロットを設置した.調査プロットでは,胸高直径1cm以上の個体を対象とした毎木調査(100m2)を行い,草本を含めた出現種の被度を記載した(400m2).

オアフ島では成立から30年以上経過した現在でも,ほとんど全ての場所でギンネムが優占していた.ギンネム以外の優占度は小さく,下層における他樹種の被度も低かった.草本を含めた出現種の大半が移入種で,在来種はほとんど分布せず,その定着や更新が制限されていた.

琉球列島や小笠原諸島では成立から30年程度でそれぞれ在来樹種や別の移入樹種によってギンネム林は置換され,ギンネムの優占度が低くなる.一方,ハワイ諸島では人為攪乱の跡地に成立したギンネム林は30年以上維持されていた.これらのことは侵入可能性(invasibility)が島嶼間で異なることを示しており,同一の移入植物であっても,在来生態系に与える影響には地理的に異なる可能性があると考えられた.


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