| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I1-12

外来ザリガニの侵入に対する生物的抵抗?在来捕食者が生態系を守る

*千谷久子(東大院・新領域), 西川潮(新大・超域), 高村典子(国環研・リスク), 山室真澄(東大院・新領域)

古くから、人為攪乱の少ない生態系では、外来種の侵入に対して在来種による生物的抵抗が働くため、外来種は定着しにくいものと考えられている(生物的抵抗仮説)。実際、Parkerら(2005)のメタ解析の結果から、外来植物は、在来草食動物によりその現存量が抑制されることが示されている。しかしながら、既往研究は外来植物に対するものが多く、動物間相互作用における生物的抵抗は知見が少ない。本発表では、野外実験とメタ解析を通じて、外来動物の侵入に対する生物的抵抗仮説を検討した結果について報告する。

アメリカザリガニ(Procambarus clarkii)は、沈水植物を摂食・破壊することにより陸水生態系全体を変化させる、外来キーストーン種である。野外実験では、アメリカザリガニの侵入に対し、カメ捕食者による生物的抵抗が働くかどうかを検証した。屋外に設置されたタンク(1m)を用いて、在来種ニホンイシガメ(Mauremys japonica)、東アジア原産クサガメ(Chinemys reevesii)、北米原産ミシシッピアカミミガメ(Trachemys scripta)がザリガニに及ぼす捕食効果と行動抑制の効果を調べた結果、ザリガニに対する捕食効果と行動抑制の効果は在来種イシガメで最も大きいことが明らかになった。次に、カメ類が沈水植物に及ぼす間接効果を調べた結果、イシガメとクサガメの存在下で、沈水植物に対するザリガニの摂食・破壊行動が抑制されることが示された。これらのことから、アメリカザリガニに対する在来カメ捕食者の生物的抵抗が示唆された。最後に、現在解析を進めているメタ解析の結果を併せて、外来動物の侵入に対する生物的抵抗について総合的に考察する。


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