| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-306

東マレーシアにおける焼畑拡大過程と,それが森林の減少に与える影響

広島大学大学院総合科学研究科 *木村公宣,

マレーシアでは伝統的な焼き畑が古くから行われてきた。伝統的な焼き畑では、森林の再生がなされるだけの十分な休閑期が設けられていたため持続的な土地利用が可能であった(井上、1995)が、昨今では森林の再生が十分なされない短い休閑期しか設けられないようになってきた。さらに森林の再生をまたず焼き畑を繰り返したことによって収量の望めなくなった場所から、地力がまだ低下していない新たな森林においても焼き畑が行われるようになった(たとえば、一次林や国立公園内)(都築、1998)。また、焼き畑からアブラヤシなどのプランテーションへの変化も目立ってきた。これらにより森林の分断化が起こっている。森林の連続性の低下は生物の生息地の分断や、ポリネーターとなる昆虫等の移動を制限するなど周囲の環境に深刻な変化をもたらしている(原科、1999)。残存林の存続可能性、森林から非森林への変化の要因を明らかにすることは森林減少・劣化の防止に非常に意味があると考えた。

そこで本研究では、マレーシアサバ州キナバル国立公園付近(90 km² )を対象地とし、多時期の衛星画像を用い時空間的な土地利用パターンの変化を観察し、残存林がどのように推移したのかを図示する。そこから、示された森林の変化の原因と今後の変化の予測を考える。

まず、1991年と2006年のサバ州の土地利用図を作成した。この図では、森林と非森林を区分けした。その結果、サバ州においては、国立公園間にある残存林において、谷や道路付近において顕著に森林が減少していた。

ここから、森林の減少には道路、集落からの距離や、地形など地域に特有の傾向があることが示唆された。また、今後も森林として存続する可能性の高い森林を抽出することにも成功した。


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