| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-149

武器形質の進化に伴う性配分の変化

*香月 雅子, 宮竹 貴久, 岡田 賢祐 (岡山大・進化生態)

メスはオスの魅力に応じて子どもの性比を産み分ける(性分配sex allocation)。より強いオスや魅力的なオスとメスが交尾した場合、メスはオスを多く産むほうが自身の適応度が高くすることができる。なぜならば、自分の息子はより魅力的になるからである。逆に、あまり競争に強くないオスと交尾したメスでは、メスを多く産むほうが、競争に勝てないオスを産むよりも適応度が高くなるため、子どもの性比はメスに偏るだろう。オスの持つ魅力に応じて性分配が生じるということは実際にグッピーなどでよくみられる。しかし、メスも親からの魅力に関係した遺伝子を受け継いでいるが、メス自身の遺伝子型の効果は無視されている。

本研究で用いられたオオツノコクヌストモドキGnatocerus cornutusでは、オスは大顎を持ち、この大顎はオス同士の闘争に使われる。大きな顎をもつオスは闘争に勝ちやすく、適応度が高くなる。我々は、大顎が大きなオスを選抜した系統(L系統)と小さなオスを選抜した系統(S系統)、コントロール系統(C系統)を確立しており、武器形質には遺伝的基盤が存在する。この系統を使って、メスの性配分について調べた。メス効果をコントロールしたときの各系統オスとの子どもの性比をみると、子どもの性比に有意な差はなかったが、オスの効果をコントロールしたときの各系統のメスとの子どもの性比は有意に異なった。オオツノコクヌストモドキでは、メスは交尾したオスによって戦略的に産み分けを行っているのではなく、メスの遺伝子型で、性配分が決まっていることが示唆される。


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