| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T01-5

有害駆除が発生するエコトーン:知床地域の事例

森本淳子(北大院農)

野生動物と人間の軋轢(農林業被害や人的被害の発生・予見やそれに伴う有害駆除)は、近年、世界的な問題である。野生動物とヒトの軋轢は、野生動物の行動圏と人間の活動圏が重なる領域で発生することが確認されている。軋轢が発生した際の最も即効性のある解決法は、駆除である。しかし、野生動物から得られる生態系サービスと福利を最大にするは、無駄な殺傷を避けることが望ましい。クマ類は、世界中で軋轢問題にとりあげられる動物のひとつである。北アメリカに生息するgrizzly bear(Ursus arctos horribilis)や、日本に生息するツキノワグマ(Ursus thibetanus)については、軋轢の発生を予防するため、軋轢を引き起こしやすい広域的な環境特性の把握が進められてきた。しかし、日本では地域的な絶滅危惧に瀕するヒグマ(U. arctos yesoensis)については、このような知見はまだ不足している。ここでは、日本で最もヒグマの生息密度が高いといわれる知床地域における、ヒグマとヒトの軋轢発生空間の特性を、ヒグマの活動領域とヒトの活動領域のエコトーンに着目して解析した結果を報告する。用いたデータは、ヒグマが捕獲された際に調査され、5倍地域メッシュに整理された捕獲頭数(道環境研)およびエコトーン(森林-畑地・牧草地・市街地の境界の有無、森林に囲まれた道路の有無、漁師小屋の有無、周囲が人工的土地利用に囲まれサケが遡上する河川の有無)の集計値である。解析の結果、年間通して軋轢の発生している空間(漁師小屋周辺、森林と市街地のエコトーン)や、季節性のある軋轢発生空間(森林と畑地のエコトーン、サケ遡上河川と市街地のエコトーン)があることが判明した。


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