| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) B2-18 (Oral presentation)

豪雪地において埋雪されたニホンザル糞の生態学的役割を考える―糞虫の視点から

*江成広斗(宇都宮大・農), 小池伸介(農工大・農), 坂牧はるか(宇都宮大・農)

食糞性コガネムシ(糞虫)は、野生動物の糞を移動・分解し、種子の二次的散布者として、更には糞から土壌への窒素循環を促進する分解者としての生態学的役割を担う。一方、一年の大半、雪で土壌が覆われる多雪地において、糞虫の活動期間は著しく制限される。糞虫非活動期において、哺乳類の糞は分解されることなく、雪中に保存される。春になって、蓄積された冬季の糞は一斉出現するが、それらがどのように利用・分解されるのか(もしくはされないのか)は、これまで不明であった。そこで本研究では、多雪地に生息するニホンザル(Macaca fuscata)を対象に、春に大量出現する埋雪糞の生態学的役割を明らかにすることを目的とした。2012年5月に、ニホンザルの埋雪糞を誘因餌としたピットフォールトラップを白神山地北東部の異なる複数の森林パッチに設置し、埋雪糞を利用する早春の糞虫群集を定量評価した。その結果、7種の糞虫が埋雪糞を利用しており、そのうちヒメスジマグソコガネ(Aphodius hasegawai)の出現頻度は顕著に高かった。今回得られた結果は、春季に大量出現する埋雪糞に関しても、糞虫により効率的に分解されている可能性があること、更には多雪地にみられる糞虫群集の季節変化(春に糞虫各種の出現頻度がピークを迎え、その後徐々に減少)を説明する可能性があることを示唆していた。


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