| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-396 (Poster presentation)

西中国山地におけるナラ類集団枯損の被害拡大に与える環境要因

*亀井幹夫(広島総研林技セ),林晋平(島根中山間研セ)

カシノナガキクイムシが媒介する病原菌によって引き起こされるブナ科樹木の枯死(ナラ枯れ,ブナ科樹木萎凋病)が,近年各地で問題となっている。西中国山地においても2000年代前半までは島根県西部にとどまっていた被害が,2012年には島根県のほぼ全域と広島県北部に広く分布しており,両県の一部の地域では,森林の公益的機能に大きな影響を及ぼすことが危惧される大規模な集団での枯死が確認された。これまでに全国各地で行われてきた調査から,被害の発生程度は樹種によって異なり,特にミズナラでは枯死被害が多いことや,標高や斜面方位の影響を受けることなどが指摘されている。ただし,被害の発生確率に関する予測はいくつかの地域で行われているが,被害の規模に着目した広域での予測はほとんどない。両県では防除事業を行っているが,激害になる危険度の高い場所を広域的に事前に予測することで,防除において限られた労力や資材を効果的,集中的に配置することが可能となる。

本研究ではMaxentを用いて,島根県と広島県において激害となった地域と環境要因との関係を解析し,被害の規模に影響を与える環境要因を明らかにするとともに,今後被害が増加すると予測される地域を抽出することを目的とした。激害となった地域は,島根県と広島県がそれぞれ作成した被害分布図から基準地域メッシュの区画ごとに枯死本数を集計し26本以上の区画とした。環境要因には気候(気温・降水量),地形(標高・斜面傾斜・斜面方位),土地利用・植生を用いた。得られたモデルからは降水量が重要な要因であることが明らかとなった。また,2012年まで枯死被害が確認されていない広島県の北東部に激害となる可能性の高い地域が存在することが示された。


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