| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-402 (Poster presentation)

どこまで減らせば木が育つ?ニホンジカの密度と無立木地の更新の関係

*立脇隆文(兵庫県森林動物研究セ),岸本康誉,藤木大介(兵庫県大・兵庫県森林動物研究セ)

兵庫県におけるシカ密度と森林更新の関係を明らかにするため、衛星画像の差分抽出によって2000年から2005年の間に森林が消失した地域を選定し、2012年に現地調査をすることで胸高直径以上の樹木の本数密度を調べた。

衛星画像による森林消失地の抽出には、2000年と2005年のLANDSAT_ETMのバンド7を主成分分析し、第2主成分値を使用した。森林消失地選別の閾値には、2004年の台風による風倒被害地の航空写真を教師として、閾値を変化させながら精度評価を行い、最も精度が高くなる閾値を採用した。

本数密度の調査では、樹種タイプによってシカの影響が異なることが予想されたため、針葉樹・林冠木、広葉樹・林冠木、広葉樹・低木の3タイプに分け、樹種タイプごとに一般化線形混合モデルを作成し、AICによるモデル選択を行った。モデルの目的変数は本数密度とし、説明変数にはシカの目撃効率の平均値、開空度、針葉樹の植栽有無、前植生、防鹿柵の有無、気温の平年値および積雪量の平年値の7変数を用いた。ランダム変数は調査地に固有なものとし、応答変数はポワソン分布に従うと仮定した。針葉樹・林冠木のモデルには、目撃効率の平均値、開空度、針葉樹の植栽有無が選択された。一方、広葉樹・林冠木および広葉樹・低木では、針葉樹・林冠木で選択された変数に加え、前植生が選択された。目撃効率の平均値の係数はどの樹種タイプでも負の値を示したが、針葉樹・林冠木で影響が弱く、広葉樹・林冠木で影響が強かったため、樹種タイプによって同じシカ密度でも更新可能性が違うことが示された。また、森林更新についてのシナリオを立て、作成したモデルを基に適切な森林更新に向けたシカおよび森林の管理方法について考察した。


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