| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-412 (Poster presentation)

人間の関与を考慮したカワウとアユの生態系シミュレーション

*井土幸夫(富士通研),小森谷均(富士通研)

最近、カワウによる淡水魚(主に、アユ)の大量の捕食が漁業関係者において問題になっている。現在、様々な方法が試みられているが、この問題を解決する有効な手段はまだ確立していない。そこで、我々はこの問題の解決のために、カワウとアユの生態系の時間的推移を予測するためのプログラムを作成している。今回は、以前に開発したプログラムを発展させて、この生態系に人間の関与の効果を取り入れて、解析を行ったので、それについて報告する。

このプログラムは、ミクロな個体ベースモデルに基づき、個々のカワウ、淡水魚(アユ、フナ)、及び釣り人の行動を記述するアルゴリズムでできている。また、このプログラムは、Java言語で書かれている。これらの個体は、互いに相互作用しながら、個体数を変化させていく。今回、検討したのは、一辺7.5kmの正方形の領域にカワウ、釣り人、アユ、及びフナがランダムに存在する環境である。カワウは、アユとフナを捕食するが、釣り人は、アユのみを釣る。また、カワウは釣り人の近傍には警戒して近づかないとする。

その結果、以下のことが分かった。

(1)釣り人の人数と釣り人の釣るアユの数には一定の閾値があり、それ以下では、カワウとアユの数は定常状態で推移するが、それを越えるとアユとカワウの数が減少する。

(2)釣り人によるカワウの追払い効果により、アユの減少を抑制できる。


日本生態学会