| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) E1-01 (Oral presentation)

熱帯林林床の高CO2濃度が実生の炭素獲得におよぼす影響評価

*冨松元,唐艶鴻(国環研 生物)

熱帯雨林生態系は、世界で最も多様性と生産性が高い生態系のひとつとして知られている。将来の熱帯森林生態を予測するためには、次世代となる実生の生残が重要であり、その生理生態特性を把握する必要がある。これら熱帯林の実生は、光資源の乏しい植物生長にとって不利とも思われる環境で生育している。その生育メカニズムについて、葉のガス交換特性(光合成)の視点から研究を進めている。

これまでの熱帯林床研究で、森林内部の大気CO2濃度が林外と比べて高いこと(特に早朝)が分かってきた。この高い林内CO2濃度は、林床植物の光合成光補償点を低下させ、呼吸量低下に貢献しているかもしれない。また、高いCO2濃度は、暗い熱帯林で重要なサンフレック(木漏れ日)の光利用効率を上昇させているかもしれない。この2つの仮説を検証するために、熱帯植物の実生(フタバキ科)を用いた野外実験を行った。

その結果、熱帯林床の高いCO2濃度は、維持呼吸の低下と最大光合成速度の増加によって炭素獲得を大幅に向上させることが明らかになった。さらに、林床の高CO2環境は、光照射直後の光合成応答の促進と、照射停止後の光合成中間産物の利用効率増加によって、変動光の利用効率を有意に増加させることが明らかになった。


日本生態学会