| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) E1-04 (Oral presentation)

多雪地における高木種の成長可能性:積雪環境と幹の形態による説明

*宮下彩奈(東大・院理),南野亮子(東大・院理),舘野正樹(東大・院理)

豪雪地山地の自然環境条件において、ブナに代表される高木種の生育可能地は、積雪深や斜面傾斜と関係があると考えられている。しかし、これらの関係が定量的に明らかにされた例はほとんどない。そこで我々は、積雪深と斜面傾斜に加えて、幹の曲率や積雪期の過ごしかた(幹が匍匐するか立木形態を維持するか)、さらに実際に積雪期間中の幹がどのような変形を受けているかに着目し、これらの要素の組み合わせから高木種の生育可能な条件を解明したいと考えている。

今年度はブナを中心に調査・測定を行った。その結果、斜面に分布している個体の幹の曲率や太さは、地形(斜面傾斜角度)だけでは説明できなかった(発表時には積雪深のデータを加える予定)。一方、測定された幹の曲率と生木の変形(伸び)限界から、雪に押しつぶされても無理なく匍匐形態をとりうるのは直径10cm以下の幹に限られることがわかった。また、現在実行中である雪中での幹のひずみ測定からは、斜面傾斜や積雪量が異なる場所において雪が幹に与える影響の詳細が明らかになりつつある。現在までで大きなひずみが観測されているのはいずれも直径10cm以下の細い個体であり、中には限界近くまで変形している個体もみられる。これらの結果から、直径10cmを超えた幹をもつ個体に倒伏を強いるような積雪環境が高木種の生育限界であることが示唆された。本発表ではさらなる測定データを加えて、その「環境」とはどのようなものかを考察したい。


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