| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-188 (Poster presentation)

セワード半島(アラスカ)における火災後の地下氷融解によるポリゴン状沈下に伴う植生変化

*露崎史朗(北大院・地球環境),岩花剛(IARC-UAF)

地球温暖化に伴う気候変動により、ツンドラ火災の規模・強度が増大しつつある。ツンドラ火災は、地表面植生の撹乱ばかりでなく、永久凍土融解に伴う環境変化をもたらす。アラスカSeward半島内陸部Kougarokでは、2002年に広域で大規模火災が発生し、ポリゴン状の地下氷が発達した緩斜面では地下氷融解に伴うポリゴン状沈下(以降、沈下)が認められる。そこで、火災とそれに伴う沈下が植生に与える影響を明らかとするために2013年夏期に火災地と、それに近接する非火災地において、140個の50 cm × 50 cm調査区を設け、植生と環境(沈下部からの距離・融解深・土壌水分・地表面粗度・傾斜・方位)を測定し、それらの対応関係を検討した。

TWINSPANにより植生は7タイプに区分された。2植生は非火災地に偏在し、3植生は火災地のみに見られた。種多様性は、火災地の方が低い傾向が認められた。プロット種数は、火災地・非火災地間で差はないか火災地で低く、火災地には火災選好種の定着が見られた。したがって、火災地と非火災地では、種の入替わりが起こっており、火災後10年を経過しても火災地の植生構造は非火災地と大きく異なっていた。

沈下は火災地でのみ見られるが、沈下と測定された環境要因との間には、斜面方位、リター堆積を除けば、明瞭な対応関係は認められなかった。しかし、多次元尺度構成法の結果は、1軸に火災強度が、2軸に融解深および土壌水分が、植生タイプを規定することを示した。GLMMの結果は、火災地内での総被度と多様性は、沈下部からの距離、斜面方位、リター堆積と関連していることを示した。

以上のことから、火災は、長期に渡り植生構造に影響を与え、その影響は、火災の直接効果と、火災による地形・環境変化を介した間接効果との複合的な作用によるものであることが示唆された。


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