| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-016 (Poster presentation)

東南アジアで進行中のニジュウヤホシテントウの寄主範囲拡大:2.集団の遺伝的構造

*村田拓也(北大・院理),加藤徹(北大・院理),藤山直之(北教大・旭川),小路晋作(金沢大・地域連携),菊田尚吾(北大・院理),Sih Kahono(LIPI),片倉晴雄(北大・院理)

ニジュウヤホシテントウ Henosepilachna vigintioctopunctata は東アジアからオセアニアにかけて広く分布し、主にナス科植物を食草として利用している。しかし、東南アジアの複数の地点では、南米から導入されたマメ科の Centrosema molle を食草として併用する集団が確認されている。これまで、マレー半島およびインドネシアのニジュウヤホシテントウを対象に調査を行ったところ、 C. molle への選好性が高い個体は西部で多く、東部にむかって減少するという地理的傾向が観察されている。

本研究では、機種特異性に変異を示す事が強く示唆される、ニジュウヤホシテントウ集団の遺伝的構造と寄主範囲拡大の過程を明らかにすることを目的とし、664個体を対象にmtDNA COI (652bp) 領域を指標とした集団遺伝学的解析を行った。その結果、クアラルンプール、スマトラ、ジャワ、ボルネオ、スラウェシの集団では、地域(島)ごとに固有のハプロタイプを持つ個体が優占し、それらハプロタイプ間の遺伝距離は地理的距離を反映した。一方で、バリ島の集団は、他の何れの地域とも遺伝的に大きく異なる複数のハプロタイプが多型的に保有されているという、独自の遺伝的特徴を示した。また、食草が異なる集団間の比較では明確な遺伝的な差異は検出されなかったことから、C. molleへの寄主範囲の拡大は各地域で独立に生じた可能性が示唆された。


日本生態学会