| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-018 (Poster presentation)

チビアシナガバチ属(Ropalidia)分巣種の起源と分布パターン成立過程

諸岡歩希*(立正大,環境)

社会性狩蜂であるアシナガバチ亜科(Polistinae)は約800種を擁する大きなグループであり,2つのコロニー創設様式が知られる.ひとつは独立創巣であり,1個体から数個体の受精メスのみでコロニーがされる.もう一方は,1個体から数十個体の女王を伴った多数のワーカーからなる群れによって新しいコロニーが創設される分巣がある.分巣は独立創巣に比べより高度な社会性を要するコロニー創設様式であるといわれ,新熱帯に分布するEpiponiniや旧世界に分布するRopalidiiniのPolybioides属とチビアシナガバチ属の一部にみられる.よって,アシナガバチ亜科内において分巣は複数回進化したことが示唆される.

このうちチビアシナガバチ属は,約200種を擁し旧世界の熱帯域を中心に分布するが,独立創巣種と分巣種の両方を一属内に有している唯一のグループである.分巣種はインドから東南アジア,パプアニューギニア,オーストラリアまで分布しているが,スラウェシ島とモルッカ諸島,小スンダ列島東部には分布しておらず,分断分布を示す.これら分巣種の起源について,分子データに基づいて種間系統関係解析を行った.分巣種の起源および現在みられる分断分布パターンの成立過程について生物地理学的および生態学的考察を加える.


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