| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) B2-36 (Oral presentation)

外来カワマスと在来アメマスの種間交雑:繁殖成功度に与える二次性徴の影響

*福井翔(北大・環境科学), Shannan May-McNally(UBC), 小泉逸郎(北大・地球環境)

外来種の侵入は、在来生態系における生物多様性の低下を引き起こす主要因である。捕食や競争、交雑を介した外来種の影響は、これまで多くの在来動植物の存続性を脅かしてきた。特に交雑は、遺伝子浸透や繁殖効率の低下を通して在来種を絶滅させる危険性がある。交雑の影響は雑種の適応度によって異なるため、今後の外来種と在来種の遷移を予測する上で、雑種個体の繁殖成功度に関する知見は重要である。

そこで本研究では、北海道空知川の外来カワマスと在来アメマスに着目し、親種および雑種個体の繁殖成功度を定量化した。特に、サケ科魚類の繁殖成功度に重要な体サイズや二次性徴(吻長や体高など)との関係性について検討した。

2013年の繁殖期にカワマス、アメマスおよび雑種の親魚(オス99個体、メス104個体)と、翌年に生まれた0歳魚(476個体)を捕獲し、マイクロサテライトDNAを用いて親子判別を行った。親魚の形態はImageJを用いた画像解析により定量化した。

雑種個体は純粋なカワマスよりも繁殖成功度が低く、種間交雑により個体の適応度が低下することが示された。外来カワマスと在来アメマスでは、強い繁殖干渉が働いているのかもしれない。一方、外来カワマスは在来アメマスよりも顕著な二次性徴がみられたが、繁殖成功度との明瞭な関係性は見いだせなかった。2013年度はアメマスの親魚数が少なかったため交雑個体はほとんど確認できなかったが、今後、調査を継続することにより交雑のメカニズムや影響がより明確になると考えられる。


日本生態学会