| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) B2-38 (Oral presentation)

外来侵略性樹種メスキートの種子膨潤過程における乾燥耐性の評価

*依田清胤(石巻専修大・理工),宮脇亮(鳥取大・農),縄田浩志(秋田大・国際資源),安田裕(鳥取大・乾地研),辻渉(鳥取大・農)

メスキート (Prosopis juliflora (Sw.) DC.) は南米乾燥地域原産のマメ科低木で、深根性による高い耐乾性をもつとともに旺盛な種子生産性を示す。これらの特性のため、メスキートは世界各地の乾燥地域で分布域を急激に拡大し、農業生産性の低下や家畜衰弱死の誘引、地下水位の低下など、地域住民の生活に様々な障害を引き起こしている。この急激な分布拡大・侵略に対する対処法を確立するためには、新たな生育地への実生集団の速やかな侵入・定着過程の解明が必須である。

本研究では、実生成長の初発段階となる種子の発芽過程に焦点を当てる。とくに発芽の初期段階である膨潤過程における種子内部構造の変化と、様々な浸透圧条件に対する種子の発芽応答を検証し、メスキート種子の乾燥耐性の評価を試みる。

膨潤種子の内部構造を環境制御型電子顕微鏡(ESEM)で観察・検討した結果、クチクラ層、明線を含む二層の表皮、柱状細胞をもつ典型的なマメ科植物の種皮構造が確認された。これらの構造に加えて細胞形状の異なる二層構造が存在し、とくに子葉に接する内側の層が種子の膨潤過程で水を含んでゲル状に変質する層であることが確認された。またPEG溶液を用いた様々な浸透圧条件で実施した発芽実験の結果、一般的な植物の永久萎凋点とされる浸透ポテンシャル-1.5MPaにおいても発芽率は80%に達し、より低い浸透ポテンシャルでも高い発芽率が維持されることから、メスキート種子が著しく高い乾燥耐性をもつことが示された。さらに、種子の膨潤過程で生成される上記ゲル状物質を除去した種子では発芽率が有意に低下することから、この物質がメスキート種子の高い乾燥耐性に寄与することが強く示唆された。


日本生態学会