| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-135 (Poster presentation)

長野県伊那市の中山間地域におけるハナバチ相と花の利用様式

*竹前千春(信大・農),大窪久美子(信大・学術院・農),渡辺太一(信大院・総合工研)

多様な生物種が共存する里地里山では、ハナバチ類が多くの植物にとって重要な送粉者とされている。川村・大窪(2002)の研究では、水田地域の市街化や整備状況によってチョウ類と吸蜜植物との関係性が異なることが示されている。そこで本研究では、立地環境条件の異なる草地環境において、ハナバチ類の蜜源・花粉源植物の利用様式を解明し、ハナバチ類と植物の種間関係の保全について検討することを目的とした。

調査地は長野県伊那市の中山間棚田地域を対象とし、天竜川の東西、基盤整備の有無の違いから4地区を選定した。ハナバチ相調査は、法面及び畦畔、林縁を含めた約2kmのルートを設定、植物に訪花しているハナバチを見つけ採りし、訪花植物及び周辺植生、立地環境を記録した。

調査の結果、ハナバチ及び植物の種数が共に最多となったのは竜西の未整備地区であった。資源が豊富なことに加え、多様なハナバチの生息場所として重要な環境であると考えられる。また、ユウガギクにアシブトムカシハナバチ、ハギ類にトモンハナバチ、ツリフネソウにトラマルハナバチが多く訪花する傾向が全体でみられた。これには成虫の活動期間や、ハナバチの口器の形状及び花の構造が関係していると考えられ、両者の種間関係が維持されることで地域におけるハナバチ相と植物相が成立していると考えられた。また、竜西・整備地区では外来種への訪花割合が高かった。大群落を形成しやすい外来種はハナバチ類にとって豊富な資源となるが、在来種にとっては外来種と送粉者を競合することになり、種子繁殖に負の影響を与えることが示唆された。今後は、ハナバチ類と関係性が強い特定の在来植物の種子繁殖に外来種がどのように影響するのかを検証する必要があると考えられた。


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