| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-148 (Poster presentation)

佐渡中山間地の棚田跡地におけるビオトープの植生と環境要因

*藤彦 祐貴, 中田 誠 (新潟大・自然科学)

農業形態の変化や農薬使用により、かつて水田で普通に見られた植物が絶滅危惧種となっているものが多い。本研究では棚田跡地に造成したビオトープの植生と、埋土種子集団、環境要因の関係を解明し、希少植物の保全に資することを目的とした。

調査地は新潟県小佐渡地域で、標高260-300m、耕作放棄後約40年が経過している。ここでは多数のビオトープが造成されており、一部に耕作放棄後の植生が保存区として残されている。

ビオトープごとの植生調査は、50cm×50cmのコドラートを10-30個ほど設置して行った。保存区の森林群落とヨシ群落で現況植生を調査し、深度5-15cmと15-25cmの土壌を採取して、まきだし実験を行った。水位は15cm、5cm、0cmの各湛水と常時湿潤の4条件とした。ヨシ群落の調査地付近に2m×1mの新規ビオトープを2箇所に造成し、前述と同深度の土壌を投入して植生と水環境を定期的に測定した。

ビオトープの植生は、水深2cm以下で適潤性植物が目立ち、水深2-5cmで湿性植物と抽水植物が多かった。水深5cm以上で浮葉植物が見られ、水深10cm以上で沈水植物のシャジクモ、チリフラスコモが出現した。まきだし実験では22種1342個体の植物が出現した。その中には、土壌採取場所に生育していない多くの水生植物が含まれていた。5cm湛水で最も多くの植物が出現した。まきだし実験の深度15-25cmの土壌からは5-15cmの土壌の1/10程度の個体数しか出現しなかった。耕作放棄後約40年が経過し、土壌の深い所では埋土種子の寿命が尽きかけているのかもしれない。新規ビオトープには18種の植物が出現し、チリフラスコモなどのレッドリスト記載種が4種含まれていた。

本調査地のような中山間地の棚田跡地で、地下水位が高いヨシ群落の土壌からは、放棄後約40年が経過しても希少植物を復元できる可能性がある。


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