| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-149 (Poster presentation)

モンゴル南部における長距離移動草食獣モウコガゼルの生息適地推定

*坂本有実(鳥取大・農), 伊藤健彦(鳥取大・乾地研), 衣笠利彦(鳥取大・農), 篠田雅人(名古屋大・環境), Lhagvasuren, B.(モンゴル科学アカデミー)

モンゴル草原に生息する草食獣モウコガゼルの季節移動の実態と生息地選択要因の解明を目的とし、モウコガゼルの衛星追跡と生息適地推定をおこなった。2013年9月にモンゴル南部の同一地点で捕獲されたモウコガゼル8個体を8時間間隔で約1年間追跡した。追跡個体の位置情報と、衛星画像や環境情報データから得られた地形、植生指数(NDVI)、積雪日数、街・国境からの距離を用いて、分布推定モデルMaxentによる夏(6-9月)と冬(12-2月)の生息適地を推定した。8個体中4個体は明確な季節移動を行わなかったのに対し、他の4個体は11月下旬から12月初旬の間に約200 km東へ移動した。移動した個体のうち夏まで追跡できた個体は、秋に利用した地域に4月初旬に再び移動した。生息適地は高い精度で推定でき(AUC, 夏: 0.924, 冬: 0.871)、夏は標高とNDVIが中程度で街から離れた場所の、冬は標高が中程度で積雪が少なく、NDVIが高く、街から離れた場所の生息確率が高かった。生息確率への寄与率が最大だったのはどちらの季節も標高であったが、夏には街からの距離の、冬には積雪日数の生息確率への寄与率が相対的に大きかった。本地域のモウコガゼル個体群では一部の個体だけが季節移動していることが示唆され、生息適地の空間分布の季節変化はモウコガゼルの季節移動だけでなく、明確な季節移動を行わなかった個体の生息地利用の季節変化もよく説明した。また、モウコガゼルの生息地選択には自然条件だけでなく人間活動も影響し、その影響は季節により変化することが示唆された。


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