| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-117 (Poster presentation)

非線形時系列解析を用いたトゲオオハリアリの集団行動における個体間影響度の定量化

*阿部真人(東大広域システム),中山新一朗(中央水研),藤岡春菜(中央大理工), 岡田泰和, 嶋田正和(東大広域システム)

社会性昆虫や鳥、魚における集団は、個体間の局所的な相互作用に基づいた集団行動を示し、集団全体として意志決定や分業を達成すると考えられている。どのようにして集団行動が形成されるのかを理解するために、個体間での情報の流れや影響度合いを定量化する試みは重要である。しかし、鳥や魚のように個体間で強く影響し合い、方向を揃える等の集団行動は実験的にも理論的にも研究が進んでいるが、個体間相互作用に加え、各個体が強く自発的な行動も示す系(例えば社会性昆虫)においては進んでいないのが現状である。

本発表では、社会性昆虫トゲオオハリアリDiacamma sp.を材料に、複数個体の動きをトラッキングすることにより各個体の移動軌跡データを取得し、各個体の単位時間あたりの移動量を活動量として個体間の影響度合いを解析したことを報告する。時系列解析には、複数の時系列間の因果性を非線形力学系の概念に基づいて定量化するConvergent Cross Mappingを用いた。これにより、どの個体がどの個体に影響を与えているかを時系列データから明らかにすることができる。結果として、一部の個体が他個体に影響し、影響度合いは個体間に非均質性があること、また、影響度合いは時間的に変化することが明らかになった。さらに、女王の存在下では影響度合いが小さくなる傾向があること、影響度合いは個体間の距離とは関係がないことも明らかになった。これらの結果から集団行動のメカニズムや分業について議論し、集団行動におけるこれまで検知できなかった相互作用を発見する新しいフレームワークを提案する。


日本生態学会