| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-333 (Poster presentation)

歴史の長いゴルフ場が保全する植物群落

*松村俊和(甲南女子大・人間科学), 橋本佳延(兵人博), 澤田佳宏(兵県大・緑環景)

[背景] 草原生植物にとって重要な半自然草原は,開発や放棄後の遷移によって面積が減少し,多様性は低下している.ゴルフ場やスキー場など商業的に維持される草原において,管理方法を工夫すれば草原生植物の逃避場所や種子供給源として機能する可能性がある.歴史の長いスキー場では原地形や原植生が残り絶滅危惧植物を含む草原生植物の生育しており,歴史の長いゴルフ場でもこれと同様の可能性が高いと考えられる.

[目的] 本研究では,歴史の長いゴルフ場に成立する群落を調査することで,逃避場所や種子供給源としての可能性を明らかにする.

[方法] 1900-1950年代に開設された兵庫県南部にある3つのゴルフ場で2015年に現地調査を行った.調査対象は,刈り取りが低頻度で地上から比較的高い位置で行われているラフやOBゾーンとした.各ゴルフ場に1m×1mの調査枠を50地点設置して,枠内に出現する維管束植物を記録した.

[結果と考察] 全地点の平均出現種数は8.2種,各ゴルフ場の平均出現種数(範囲)は,11.3種(1-23種),8.2種(1-23種),5.2種(1-16種)であった.各ゴルフ場とも出現種数が1種と種数の少ない地点から種数の多い地点までばらつきがあった.主な優占種はネザサとシバであったが,多くの地点で30cm以下に低く刈り込まれていた.ネザサとシバが優占する群落における平均出現種数は,それぞれ10.4種と3.9種であった.ネザサが優占する群落ではヒメヤブラン,トダシバ,ススキ,ヤイトバナなどが高い頻度で出現し,ツリガネニンジン,リンドウ,ワレモコウなどの草原生植物も生育していた.

[結論] 歴史の長いゴルフ場のうち,ネザサが優占する群落では草原生植物が比較的多く出現していたことから,このような群落は草原生植物の逃避場所や種子供給源として機能する可能性があると考えられる.


日本生態学会