| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-341 (Poster presentation)

鳥類の絶滅リスクを抑えるための木材生産・消費シナリオの探索

*西嶋翔太 (横浜国大), 古川拓哉 (森林総研), 角谷 拓, 石濱史子 (国環研), T. Kastner (Univ. Klagenfurt), 松田裕之, 金子信博 (横浜国大)

バイオマス資源の消費は国際貿易を通じて生産国の生物多様性に脅威を与える。つまり、国際貿易の関係や消費パターンを変えることによって、生物多様性の減少速度を緩和できる可能性がある。私たちは木材の生産と貿易が絶滅危惧鳥類の絶滅リスクに与える影響を評価可能な、生物多様性フットプリント指標を開発してきた。これは、国際自然保護連合 (IUCN) のレッドリストで木材生産の影響を受けているとされる536種の鳥類を対象に、種の分布マップと森林消失マップの重ね合わせから算出した生息地の減少率と個体数から推定した絶滅確率に基づいた指標である。これまでの解析で、2000~2005年の森林消失率が続くと2100年までに12%の種が絶滅するという試算が得られている。本研究では、木材の生産パターンと消費パターンを変化させることで、鳥類の絶滅リスクを抑制可能なシナリオを探った。

まず、需要分の木材を各国が自給するシナリオを解析したところ、中国や日本、メキシコやフィリピンなどで絶滅リスクが高くなり、現状が続くシナリオと比べて、絶滅種数がやや大きくなるという結果が得られた。次に、全世界でも木材生産量を変えずに、全対象種の2100年時点での絶滅確率が10%以下になるシナリオを求めた。その結果、木材生産量を減らすべき国は、ブラジル・中国・インドネシア・インド・オーストラリアなどであった。一方、木材生産量を現状より増やすことが可能な国として、アメリカ・ロシア・フランス・アルゼンチンが選ばれた。この結果は、アメリカや日本といった先進国が木材の輸入先を変更することで世界規模での生物多様性の損失を防げるかもしれないことを示唆している。


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