| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-343 (Poster presentation)

福井県北潟湖と周辺地域の植生の変遷と要因の分析

福井県・里山里海湖研

福井県の最北端に位置する北潟湖(面積2.13 km2)は、約6000年前に加越台地が浸食されてできた谷に水がたまって形成された、汽水から淡水の湖である。湖の最下流部に設置された開田橋水門は治水のための流量調整の役割を担い、開門時は海水が湖に流入するため、湖の塩分濃度は季節的にも変動する。生物相は汽水性から淡水性までの魚類が生息しており、マガン、ヒドリガモ、マガモの渡来地として環境省が定める「日本の重要湿地500」に登録されているほか、同じく環境省による「生物多様性保全上重要な里地里山」として、北潟湖周辺の里地里山が選定されている。一方、近年は、湖の富栄養化、外来魚ブルーギルなど外来生物の侵入、湖岸植生帯の消失など、生物多様性および生態系保全上の課題がある。水門の設置によって淡水化が進んだ北潟湖は、農業用の利水や淡水の内水面漁業の場として、地域の農業や漁業の発展に寄与してきたが、現在、湖の水を利用した耕作地での塩害の発生や漁獲量の減少など、その対策が必要となっている。2013年度には、「北潟湖自然再生に関する協議会」が設置され自然再生の取り組みが開始されるとともに、自然再生の目標と具体的な取り組みを定めた「全体構想」の策定が課題となっている。本研究では、全体構想の目標検討のための基礎情報として、北潟湖の過去から現在までの植生を含む土地利用・土地被覆の変遷を把握し、その要因を検討する。3時期(1948年、1975年、2008年)に撮影された空中写真を用いて、各時期の土地利用・土地被覆図を作成し、土地被覆(植生、市街地、農地など)の変化を定量的に分析する。過去の植生の種構成について、文献資料を調査するとともに、地元住民を対象として聞き取り調査を行う。以上の情報を統合し、現在までの植生と植物種の分布の変化傾向を明らかにし、その要因を検討する。


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