| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-367 (Poster presentation)

豊岡盆地におけるコウノトリの採餌環境はどのように変わったか?

*田和康太(兵庫県大院・地域資源), 佐川志朗(兵庫県大院・地域資源/兵庫県立コウノトリの郷公園)

兵庫県但馬地域の豊岡盆地では,コウノトリの採餌環境を確保するために河川域や水田域において様々な自然再生事業が行われている.しかし,野生絶滅前のコウノトリの採餌物や採餌環境に関する詳細な知見は存在せず,また,再導入個体群についてもそれらは十分に解明されていない.演者らは,豊岡盆地における再導入個体群の採餌物と採餌環境を明らかにし,さらに,昭和初期からの豊岡盆地における採餌環境の変遷を把握することで,野生絶滅前のコウノトリの採餌環境がどのように変化したかを検討した.

再導入個体群の採餌物と採餌環境の解明には,豊岡盆地における再導入個体のべ335羽のモニタリングデータ(2005~2013年)を用いた.その中から採餌物と採餌環境に関するデータを抽出し,季節ごとに集約した.また,豊岡盆地周辺における空中写真(国土地理院発行)を利用し,コウノトリの採餌環境が良好に維持されていたとされる昭和初期から現在への採餌環境の変遷を精査した.

再導入個体群は陸生・水生を含めて36分類群の動物を採餌していた.周年採餌されていた動物はミミズ類,アメリカザリガニ,昆虫類,カエル目成体,ドジョウ,フナ属などであった.また,ヘビ亜目やバッタ目,イナゴ科などが特定の季節に集中して採餌されていた.周年の採餌環境は,河川や水路,湿地,水田,畦畔,短草地であった.昭和初期とこれらの採餌環境を比較すると,現在では,円山川河道内の中洲の消失や湿地・耕作地(水田)面積の減少が顕著であった.加えて,耕作地では,不整形な圃場の減少がみられ,昭和初期に比べてコウノトリの採餌環境は減少していることが示唆された.以上を踏まえ,本発表ではこれからの自然再生に必要な要因を検討する.


日本生態学会