| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-I-282  (Poster presentation)

蛇紋岩土壌における生葉の分解

*佐藤開, 梶野浩史, 河合清定, 斎藤悠, 中井渉, 中村亮介, 岡田直紀(京大院・農)

蛇紋岩土壌は重金属濃度が高く、植物の生育には不適だと考えられているが、実際には樹木が生育し、森林が成立している。そのため蛇紋岩土壌の既往の研究は生きている植物についての生態学的研究が主であった。人為的な汚染土壌・汚染落葉の微生物活性の低下の報告から、蛇紋岩土壌もまた微生物活性が低く、葉の分解が遅くなると考えられているが、植物遺体の分解に関する研究は少なく、確かめられていない。したがって実際の分解速度を測定し、かつ土壌重金属の影響と葉重金属の影響を分けて評価することは、分解動態の精確な理解にとって重要である。そこで本研究では、仮説1「非蛇紋岩土壌と比べて蛇紋岩土壌での葉分解は遅い」、仮説2「非蛇紋岩林分由来の葉と比べて蛇紋岩林分由来の葉の分解は遅い」を設定し蛇紋岩土壌において検証した。

京都府北部の大江山において、非蛇紋岩土壌地帯(N;Non-serpentine)と蛇紋岩土壌地帯(S;Serpentine)を調査地とした。両調査地の共通樹種であるコナラ(Quercus serrata)とリョウブ(Clethra barbinervis)の生葉を10 gずつバッグに入れた後、N由来のコナラ・リョウブをN土壌とS土壌とに、S由来のコナラ・リョウブもN土壌とS土壌とに6月に設置した。9月と11月にバッグを回収し、葉の重量残存率(%)を求めた。葉に含まれる難分解基質の量の評価のために、分解試験前後のクラーソン残渣濃度(%)を測定した。

重量残存率に関しては、異なる土壌間で9月・11月ともに有意差が無く、仮説1は棄却された。由来の異なる葉間では9月・11月ともに蛇紋岩林分由来の葉の方がより重量残存率が高く、仮説2は支持された。その理由として蛇紋岩林分由来の葉の方がクラーソン残渣の減少量がより小さく、難分解基質の組成の違いが分解性に影響していることが示唆された。一方で、重金属濃度がコナラよりも高いリョウブの方がより分解されたことから、葉の重金属は分解に直接は影響しないことが示唆された。


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