| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-K-324  (Poster presentation)

同所的に生息するグエノン(Cercopithecus属)3種における食性の種間比較

*峠明杜(京都大学 霊長類研究所)

 本研究の調査地であるウガンダのカリンズ森林にはチンパンジーを含む6種の昼行性霊長類が棲息している。このうちグエノン類(Cercopithecus属)は樹上性のレッドテイルモンキー(C. ascanius)とブルーモンキー(C. mitis)、そして地上性の強いロエストモンキー(C. lhoesti)であり、各種1群ずつが人づけ(habituation)されており容易に直接観察できる。3種はしばしば混群(a mixed-species group)を形成し、長時間にわたり移動・採食を共にする。本調査地では特にブルーとレッドテイルの混群が毎日のように見られる。グエノン類では混群現象は珍しいことでなく、その成立要因としては採食効率向上や捕食者回避などが考えられているが詳しいことは分かっていない。3種の主な食物は葉や果実であると言われているが、本調査地では昆虫食にかける時間が採食時間の55~66%を占める(ブルー、ロエスト; Tashiro 2006)。
 まず3種がどの植物種のどの部位を食べるのか(植物食)、どの植物種のどの部位から昆虫を得るのか(昆虫食のための植物利用)を調べるため、2016年8月~9月に3種の直接観察をおこなった。結果、植物食・昆虫食の両方で同じ傾向が見られた。つまり利用する植物種数・部位数はブルー、レッドテイル、ロエストの順に多く、ブルーとレッドテイルが共通して利用する部位数が他の2ペアに比べ多かった。
 次に3種が食べている昆虫相とその重なりを調べるため、行動観察中に採集した3種の糞156個からDNAを抽出、昆虫mtDNAのCOI領域を増幅、次世代シーケンサーMiSeqを用いてPCR産物の配列を読みメタバーコーディング解析をおこなった。結果、食べている昆虫相についても同じような傾向が見られた。つまり、昆虫OTU数もブルー、レッドテイル、ロエストの順に多く、ブルーとレッドテイルが共通して利用するOTU数が他の2ペアより多かった。これらのことからブルーとレッドテイルの2種は毎日のように混群形成をしながらも食い分けをしていないことが示唆された。


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