| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-K-338  (Poster presentation)

東南アジア熱帯雨林に生息する野生哺乳類の遭遇頻度の季節変化

*太田彩菜(首都大学東京)

熱帯雨林には生息する人気のある野生生物の多くは低密度で、夜行性であるため、観察できる野生生物は極めて限られている。そのため、熱帯雨林において野生生物観光を推進するためには、野生生物の出現頻度を理解し、観光客と野生生物の遭遇管理を適切に行うことが必要である。多様性な生態的特性を持つ熱帯雨林の野生生物は人間に対する警戒行動も様々であるため、季節や観光客の有無によって出現頻度は変化する可能性がある。しかし、いつ、どのような時期に野生生物が出現しやすく、観光客との遭遇が起こりやすいかは不明な点が多い。
そこで本研究は、多くの観光客が訪れるマレーシアの国立公園内にビデオカメラトラップを設置し、撮影された野生哺乳類の出現時間、頻度を評価し、野生哺乳類との遭遇における季節変化について検討した。
本研究は、半島マレーシアに位置するエンダウ・ロンピン国立公園Petaエリアで行った。2015年5月から2017年2月までビデオトラップ9~11台を設置し、撮影された哺乳類の時間、頻度等を評価した。
その結果、7種の絶滅危惧種(アジアゾウ、トラ、マレーバク、ヒゲイノシシ、マレーグマ、サンバー、ヒョウ)を含む34種の小~大型野生哺乳類が撮影された。撮影頻度については、最も多く撮影されたのはヒゲイノシシで、アジアゾウやトラなどの絶滅危惧種も複数撮影された。全体的には、観光客が多く訪れる5~7月にかけて野生哺乳類が高頻度に撮影されており、観光の増加により野生生物の出現頻度は低下しないことが明らかになった。一方、野生哺乳類の出現頻度における季節性は種により違いが見られた。例えば、アジアゾウは3、6、9月に出現頻度が減少していた。本研究で得られた知見を活用し、野生生物との遭遇確立が高い時期、場所を把握し、リスクが高い野生生物との遭遇を避けることで遭遇管理を行うことが出来れば、魅力的で安全な野生生物ツアー提供に貢献できるものと期待される。


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