| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-K-342  (Poster presentation)

ミツバチコロニーのエネルギー収支の見積もり-成長期と退行期の比較

*吉田澪, 大橋瑞江, 木村敏文, 岡田龍一, 池野英利(兵庫県立大学)

社会性昆虫であるミツバチは集団としての特殊なエネルギー獲得・消費システムを持つ。そしてエネルギー収支を変化させることにより、環境に適応して生活している。よって季節ごとのエネルギー収支の解明により、ミツバチコロニーの存続に関わるエネルギー循環の仕組みの理解が期待できる。しかし従来はコロニー全体のエネルギー収支を推量した例は少なく、個体や集団のミツバチの行動のみに着目した研究が多い。また、エネルギー収支の変動パターンはコロニーが成長する春から夏と、成長が後退する夏から秋で異なることが予想される。よって本研究ではミツバチコロニーのエネルギー収支を推定する手法を確立すること、およびエネルギー収支の季節変動との関係を明らかにし、成長期と退行期とで比較することを目的とした。
 実験は観察巣箱を用いて2013年8月から10月、および2016年6月から7月の2回実施した。それぞれ巣箱入口の映像、巣内のCO2濃度のデータを取得した。2013年度のみ重量のデータも取得した。エネルギー獲得量Cinは採餌バチの個体数から、消費量Coutは巣内のCO2濃度の変化から算出した。また1日ごとにCinとCoutを算出し、これらの変化を説明できる要因を重回帰分析により求めた。得られた重回帰式によって長期的な変動を明らかにし、成長期と退行期とで変動パターンを比較した。
その結果、コロニーの退行期のCinは12時から15時の平均気温で、Coutは日数で表わすことができた。一方、成長期のCinは18時の気温と日数で、Coutは7時の気温で表すことができた。Cinは退行期では9月に最も多く、成長期では6月が高い傾向にあった。Coutは退行期では8月から10月にかけて高くなったが、成長期は6月から7月にかけて低くなった。エネルギー蓄積量の積算値と重量との間に正の相関がみられたため、本実験はエネルギー収支を推測する手法として妥当であるといえる。


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