| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-190  (Poster presentation)

熱帯林の断片化履歴が樹木個体群アバンダンスへ与える影響

*竹内やよい(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター), 鮫島弘光(地球環境戦略研究機関 自然資源・生態系サービス領域), Bibian Diway(Botanical research center Sarawak, Malaysia)

局所群集の種多様性や種構成には、その群集を取り囲む景観構造や配置が影響を与える。この影響の顕在化は、一般的にタイムラグが生じていることが知られている。そのタイムラグを作る主要なプロセスである、extinction debt(EB, 生息地減少後に絶滅が遅れて起こること)やimmigration credit(IC, 生息地再生後に移入が遅れて起こること)は、特に生活史形質の差によって生じているといわれている。例えば植物種において、平均寿命やシードバンクなどの世代の長さなどの形質はEBに、種子散布能力はICに関連すると考えられる。そこで本研究では、森林断片化が進む熱帯林を対象として、過去の景観構造が現在の森林群集の種多様性、各個体群のアバンダンスに影響を与えているのかを明らかにする。特に次の問を挙げる。1)過去の景観の森林率が現在の局所群集の種多様性に影響しているのか?、2)過去の景観の森林率が樹木の個体群アバンダンスに影響を与えているのか?また、耐陰性や種子散布能力などの形質によって差があるといえるか?
調査対象としたのは、マレーシア、サラワク州の開発が進む2つの地域(各約200km2)である。それぞれの地域には断片林が8つずつ存在する。断片林内に0.25haの大きさの調査区をそれぞれ計16、19個設置し、調査区内の胸高直径10cm以上のすべての樹木を記録した。結果として、それぞれの地域で2548、3105個体が出現し、それぞれ543、524種に分類された。種多様性(α多様性)についてレアファクション解析を行ったところ、プラウのα多様性は原生林と同等のレベルであった。次に、対象地域の過去40年のLandsat衛星画像を解析し土地利用を森林・二次林・裸地に分類し、森林率の変遷を算出した。プロットの現在の種多様性と個体群アバンダンスに過去の森林率が影響するか、統計解析を行った。発表ではその結果を示し、土地利用の変遷が種多様性・個体群アバンダンスに与える影響のタイムラグ効果、生活史形質による違いを議論したい。


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