| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-204  (Poster presentation)

生物多様性保全のための大学院(専門職)演習を通じた放置里山林管理

*藤原道郎(淡路景観園芸学校, 兵庫県大院緑環境景観マネジメント研究科), 澤田佳宏(淡路景観園芸学校, 兵庫県大院緑環境景観マネジメント研究科)

兵庫県立大学緑環境景観マネジメント研究科(兵庫県立淡路景観園芸学校)は造園・環境系の専門職大学院であり,研究者養成ではなく実務家養成を目的とし,演習主体のカリキュラムとなっている.キャンパスは淡路島北部の中山間地に位置し,周囲を棚田や里山林に囲まれているうえ,キャンパス内にも二次林が存在し,里山林管理の教育を行うのに適しているといえる.2009(平成21)年の専門職大学院開設時から,通年科目である里地里山の保全管理演習において,生物多様性保全のための放置里山林管理を実施している.6月の2コマを使い管理対象地(10×10m)の毎木調査および林床植生調査を行い,その結果から間伐対象木を選定している.11月ないしは12月の2コマを使い間伐作業を実施している.管理手法は高林管理と呼ばれるもので,高木は残し低木層の常緑広葉樹を中心に間伐を行い,林愛の光環境を改善させるというものである.2009年の間伐試験区では幹数179本/100m2であったものを42本/100m2とした.ヤマザクラ,コナラなどの落葉広葉樹は残し,ヒサカキを136本/100m2から36本/100m2へと減少させた.それにより相対照度は0.3%から8.7%に増加した.2011年の間伐試験区においてはヒサカキの樹冠面積合計は173m2/100m2であったものを4.2m2/100m2へと減少させた.これらの間伐1年目から7年目までの間伐試験区の林分構造の検討を行った.実生による定着および萌芽再生が見られ年次経過に伴う樹高の伸長が顕著であった.また低木層の被度も増加しており常緑樹林化も進行していた.これらは常緑広葉樹林域であることおよび周囲にも常緑広葉樹が優占していることに起因すると考えられた.


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