| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-214  (Poster presentation)

伊豆沼・内沼湖岸に発達した植物相の特徴と立地環境の対応関係、ならびに保全上の課題について

*速水裕樹(公益財団法人宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団), 藤本泰文(公益財団法人宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団), 嶋田哲郎(公益財団法人宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団), 横山潤(山形大学 理学部 生物学科)

近年,埋め立てや干拓,水質汚濁などによって,日本の平野部では湿生植物や水生植物の減少が著しい.宮城県北部に位置する伊豆沼・内沼は,水鳥の貴重な生息地としてラムサール条約に登録された湿地であるが,平野部に残る大規模な湿生植物,水生植物の自生地としても貴重である.しかし,当地においても干拓や水質汚濁などの影響で,湿生,水生植物の数は年々減少している.本研究では,伊豆沼・内沼に残存する湿生,水生植物群落の保全のため,その種組成を調査し,標高や底質,植被率などの立地環境との対応関係を明らかにした.
今回の調査で得られた植生調査データを使用し,TWINSPANを用いて構成種群を区分し,INSPANによって指標種を抽出した.その結果,アズマネザサやチガヤなどの陸生植物群落,ヨシやアゼスゲなどの湿生植物群落,ヒシやホソバミズヒキモなどの浮葉・沈水植物群落に大別された.さらに,調査データをDCAによって序列化し,ラウンケアの休眠型などの生活型に関する指標や立地環境との関連性を調べたところ,これらの群落間では水生植物や一年生植物などの出現比率に違いがみられた.また,これらの違いは冠水の程度,地表付近の植被率などに起因すると考えられた.
今回の調査で確認された絶滅危惧種は合計で15種に及び,その全てが湿生植物群落と浮葉・沈水植物群落に出現した.また,5種の絶滅危惧種が1つのエリアに集中して存在したなど,その出現傾向には偏りがみられた.伊豆沼特別保護地区の面積は907haあり,全域において保全管理を実施することは現実的ではないが,絶滅危惧種の出現数は,保全対象区の絞り込みや順位付けの目安になると考えられた.また,生活型の違いは,刈り取り回数や水位管理などの保全対策を決定する際の目安になると考えられた.


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