| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-217  (Poster presentation)

植生学に基づく鉱山荒廃地での植栽された樹木の動態と環境条件の関係について

*目黒伸一(国際生態学センター)

  精錬の過程で酸性霧の発生や不要になった鉱滓、廃石、鉱屑などにより、鉱山周辺の環境が劣化することは多い。本発表の調査対象地は秋田県の鉱山精錬地であった場所で、荒廃した土地の植生を復元する試みが2006年からなされてきた。
  周辺の植生調査を行うことで潜在自然植生を判定し、その構成樹種群を植栽する立地の特性を考慮して判別・選定する。地域周辺で採取された種子からポット苗を育て、毎年植栽してきた。用いた樹種はミズナラ、コナラ、ハウチワカエデ、オオヤマザクラ、シナノキ、ヤマボウシ、ナナカマドなどの夏緑広葉樹で、これらを混植した。
  植栽地は鉱山の影響を受けていない開放地、廃石・鉱屑由来の捨石堆積場、鉱滓が積み上げられたカラミ山などの開放地、およびニセアカシア植林下の閉鎖値林地で行った。2017年2月現在、これまでに14万本を超える樹木が植えられている。
  これらの異なる環境条件下植栽地に調査区を設置し、その生長挙動の追跡調査を継続的に行った。植栽後7~10年間で生存率は50~90%で、林冠は閉鎖しつつある。また、樹種によっては開花・結実するようになってきている。また、植栽地および自然林分における土壌調査を含水比、pH(水素イオン指数)、全窒素、全炭素について行った。
  生長解析からの土壌養分と植栽樹木の生長量には正の相関がみられ、土壌養分が豊富なほど樹木の生育が活発になっていることが認められた。ただし、植栽10年程度では自然状態の土壌養分には遠く及ばない結果も同時に得られた。また、ニセアカシア林下に植栽された場所は他の植栽条件地を比較して良好な生長を示し、ポット苗植栽によるニセアカシア林の林相転換の可能であることが示された。


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