| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-I-284  (Poster presentation)

花色の過分散を示す植物群集における訪花者の網羅的調査:花色で変わる訪花者タイプ?

*牧野崇司, 佐藤宏美, 横山潤(山形大学)

山形県上山市のある植物群集において、同時に咲く種ほど花色が異なる傾向(過分散)が検出された(Makino & Yokoyama 2015)。この結果は、植物が、他種と異なる花色を呈することで異なるタイプの訪花者を誘引し、繁殖に不利となる異種間の花粉移動を抑えている可能性を示唆している。花色と訪花者の関係については、ハナバチ媒花は青、ガ媒花は白といった大まかな傾向が知られているものの、群集を構成する訪花者の種類は場所や季節などによって変わるため、上山の群集における花色と訪花者の対応関係は不明である。
 そこで本研究では同群集において、2015年の4月中旬から11月上旬にわたり2種類の調査を行った:1) 約3.5kmの調査路を巡回しながら、花への訪問が確認された昆虫を捕獲する週1回の調査;2) 決められた植物種の前で1時間待機し、花を訪れた昆虫を捕獲する月1回の調査。
 調査では、163種の植物に対し合計4747頭(少なくとも313種)の訪花者を確認した。これら訪花者は大きく6つのタイプ(ハエ・ハナバチ・チョウ・コウチュウ・カリバチ・カメムシ)に分けられ、その構成比は個体数ベースで35%、24%、22%、12%、4%、2%だった。つぎに、花の色を訪花者の色覚モデルで定量し、色の似ている植物種のペアと異なる植物種のペアに分けたところ、種間の訪花者相の違いは色の異なるペアでより大きくなっていた。また、花色を色相でわけると、例えば白系の花でハエの割合が高くなるといった、色相ごとに特徴的な訪花者相の偏りが見つかった。しかも、これらの偏りの多くが、色相や訪花者相の季節的な同調で説明できる範囲を超えていることも、ランダマイゼーションにより明らかとなった。同群集の植物は、異なる色の花で異なるタイプの訪花者を誘引することで、異種植物間の花粉移動を抑えているのかもしれない。


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