| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-P-454  (Poster presentation)

落葉広葉樹林林冠樹種の枝の強度と風による揺れ、台風による落枝量の関連

*長田典之, 日浦勉(北海道大学)

森林には様々な形質を持つ樹種が共存する。光を巡る競争下で枝は葉を三次元的に配置するために重要であり、枝と葉の量や形質のバランスは個体の生産性に大きく影響すると考えられている。枝の強度などの形質は種によって多様であり、その生態学的意義に着目して多くの研究が行われてきた。ただし、これまでの研究の多くは実生や稚樹を対象としており、上層木からの落枝などによる撹乱の影響に着目することが多かった。一方、林冠木ではまれに起こる強風が樹木の成長、生存に大きく影響することが指摘されているものの、枝強度と林冠における枝の揺れの程度や落枝量の関係は明確ではない。本研究では、冷温帯落葉広葉樹林に建てられた林冠観測クレーンを用いることで、林冠樹種4種(ミズナラ、オオバボダイジュ、アサダ、シウリザクラ)の枝の強度と風による揺れ方、台風による落枝量の関連を調べた。各種3個体を対象として林冠樹木から直径1cmの枝を採取し、強度の指標として材密度、ヤング率(曲がりにくさ)と破壊応力(折れにくさ)を調べた。枝の揺れとして、同様な枝に加速度センサーを付け、着葉期の2016年6〜10月に30分間隔で加速度を記録した。また、2016年8月に台風10号の影響で林床に多数の枝が落下したため、その直後に1haプロット内で新鮮な落枝の量(種および基部直径)を調べた。
 この結果、ヤング率と破壊応力はアサダ、シウリザクラよりミズナラ、オオバボダイジュで小さかった。枝の揺れとして枝の座標変化(ローパスフィルター)と一時的な重力のかかりかた(ハイパスフィルター)を考慮したところ、明瞭な種間差は見られなかった。台風時の落枝量は枝強度と対応しており、ミズナラとオオバボダイジュで多い傾向が見られた。以上の結果を元に、森林樹木の枝強度の種間差について論じる。


日本生態学会