| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-Q-462  (Poster presentation)

クマイザサの葉の光合成や色素量の3年間の季節変化の比較

*小野清美(北海道大学)

ササは冷温帯に広く分布する常緑植物である。落葉樹林の林床に生育するササは、上層木の展葉や落葉による光環境の変化にさらされるだけでなく、気温も季節変化するため、低温と強光の組み合わせにより、光ストレスを受ける可能性がある。クマイザサ(Sasa senanensis)の越冬葉は、雪解け後の低温や上層木が展葉する前の強光にさらされ、光化学系Ⅱの最大量子収率(Fv/Fm)の値が低く、光エネルギーの熱放散に関わるキサントフィルサイクルの色素量が多く、脱エポキシ化の割合が高かった。5月には上層木の展葉が始まるため、クマイザサは弱光におかれ、5月下旬にはFv/Fmは0.8付近になり、キサントフィルサイクルの色素量や脱エポキシ化の割合は低下した。上層木の落葉が始まる11月まで、このような状態は保たれた。クマイザサの当年葉は、上層木が展葉した頃に展開し始めるため、展葉中は弱光下におかれた。当年葉の光合成能力は9月には越冬葉よりも高まる傾向がみられたが、11月には低下した。上層木の落葉後、越冬葉および当年葉では、Fv/Fmの低下、キサントフィルサイクルの色素量や脱エポキシ化の割合の増加が見られた。2014年から2016年までの3年間、このような変化が見られたが、変化の程度や時期には若干の違いが見られた。クロロフィルa/b比はキサントフィルほど大きく変化せず、変化の仕方は年により異なった。


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