| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-Q-467  (Poster presentation)

鉱山跡地に自生するススキ(Miscanthus sinensis)の内生菌が産生するAl解毒物質の同定

*春間俊克(筑波大学院・生命環境), 山路恵子(筑波大学・生命環境系), 升屋勇人(森林総合研究所東北支所), 関根由莉奈(日本原子力研究開発機構), 香西直文(日本原子力研究開発機構)

  ススキはAlが植物毒性を示す酸性土壌においても優占することが知られている。調査地のススキの元素分析を行ったところ根に約2,000 mg/kg DWと高濃度のAlを蓄積しており、Al耐性を有すると考えられた。これまでの結果では、ススキ根部から分離した内生菌Chaetomium cupreumは高いAl解毒物質産生能を有し、ススキ実生への接種試験においてススキのAl耐性の増強が示唆されている。一方、産生されたAl解毒物質は同定されておらず、C. cupreum自体に対するAlの影響を考慮する必要がある。本実験ではAl解毒物質の同定を行うとともにC. cupreumの生長量やAl解毒物質の産生量に対するAlの影響および菌体へのAl蓄積の観察を行うことで、C. cupreumに対するAlの影響を明らかにすることを目的とした。
1% malt extract液体培地中でC. cupreumを培養し、種々のクロマトグラフィーに供して単離・精製を行った。X線構造解析の結果oosporeinであると同定した。C. cupreumに対するAlの影響を明らかにするために、Alの終濃度が0、100、250 µMになるように調製した1% malt extract(pH 4.0)に菌糸を接種し、振とう培養を行った。培養後、菌体乾燥重量および菌体内のAl濃度を測定し、菌体内でのAlの局在を観察した。菌体乾燥重量は培養液中のAl濃度の上昇に伴い増加する傾向が確認された。菌糸内のAl濃度は培養液中のAl濃度の上昇につれ有意に高くなり、菌体内におけるAlの局在も顕著に観察されるようになった。Alには糸状菌の生長抑制の報告があるが、C. cupreumは菌糸内に高濃度にAlを蓄積しても生長が抑制されないことからAlの解毒能力を有すると推察された。菌体内および培養液中のAl解毒物質については現在、定量中である。


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