| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-192  (Poster presentation)

琵琶湖沿岸部におけるオオクチバス稚魚の食性

*野村将一郎(龍谷大・理工), 鶴谷峻之(龍谷大・院・理工), 野村賢吾(龍谷大・院・理工), 太田真人(龍谷大・里山研), 遊磨正秀(龍谷大・理工)

 オオクチバスMicropterus salmoides(以下バス)稚魚の初期食性は動物プランクトンであり、体長が大きくなるにつれて水生昆虫、甲殻類、魚類へと食性が変化していく。その中で栄養価が高い魚類を摂食することで冬季の死亡率を低下させると言われており、魚食への移行はバスが生存する上で必要不可欠である。魚食への移行とその条件を明らかにすることで在来生態系への影響を考える必要があるが、これらの知見は乏しい。本研究では、バス稚魚の魚食への移行と周囲の餌資源との関係を調査することで魚食への移行の条件を探り、在来種への影響を検討した。
 滋賀県高島市安曇川町に流れる安曇川南流付近にある琵琶湖沿岸の入り江で2017年7月から9月にかけて計5回、バス稚魚と餌資源の採取を行った。採取した稚魚の個体数は計79匹(全長16.0~63.4mm)であり、各全長とも動物プランクトンを主な餌資源としていた。胃内容物に確認できた魚類はブルーギルLapomis macrochirusで、在来種の摂食は確認されなかった。また、魚食への移行は不明瞭であった。バス稚魚の胃内容物と魚類餌資源から魚食への移行には、餌となる魚類の産卵期、摂食可能な餌魚類サイズ、バス稚魚と生息地が類似していることが重要と考えられた。魚食への移行が確認されなかった水域は生物相が貧弱などの要因が挙げられている。しかし、琵琶湖は餌料生物が豊富で、成魚の魚類摂食率が高いという報告を踏まえると現在の琵琶湖全体を通して、在来種の減少により魚食は難しくなったことや、本調査地には利用可能な餌魚類が少なかったことが考えられる。これらを検討するにも複数地点での比較が必要であると考えられる。また、本調査で採取されたバス稚魚は産卵期後期の個体であり、産卵期初期に産まれた稚魚の方がその後の餌環境に恵まれるという報告から長期の食性調査が必要と考える。


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