| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-194  (Poster presentation)

外来ザリガニの侵入歴の違いに伴う行動特性の変化

*工藤秀平(金沢大・理工), 北野聡(長野環保研), 西川潮(金沢大・環日セ)

北米原産のシグナルザリガニ(ウチダザリガニ;Pacifastacus leniusculus)は、捕食や競合、病気の媒介などを通じて侵入先の生態系に甚大な被害を与える侵入種である。これまでの研究から、日本に導入されたシグナルザリガニは3つの創始集団(北海道、長野、滋賀)から構成され、うち北海道由来の集団が近年分布域を拡大するとともに、侵入年の新しい集団ほどハサミ(鉗脚)が大型化していることが示されている(Usio et al 2016, Ecol Evol)。本研究では室内実験を通じてシグナルザリガニの侵入歴の違いに伴う攻撃性や活発さといった行動特性の変化を検証した。一般にザリガニ類の鉗脚の大きさは攻撃性と密接に関係していることから、「侵入年の新しいシグナルザリガニ集団は攻撃性が高く、活発に採餌を行う」ことを仮説とした。実験は、初期に導入された摩周湖集団(1930年導入)と、近年定着が確認された長野県片桐ダム湖集団(2010年定着)に加え、両集団の中間年に定着が確認された然別湖集団(1993年定着)、洞爺湖集団(2005年定着)を対象とした。最初に各集団の攻撃特性を明らかにするため、侵入集団ごとに体サイズがほぼ等しい2個体を水槽に入れ、5秒ごと10分間の攻撃行動と接近数(両者の距離が1個体長以下になった回数)を記録した(実験1)。次に各集団の活発さを明らかにするため、各個体の初めて見る餌(ニンジン)の消費量を測定した(実験2)。結果、シグナルザリガニの侵入集団間で攻撃性が異なる傾向が認められ、特に摩周湖集団と比べ、然別湖集団間でより攻撃的であった。また然別湖集団では、体サイズや鉗脚サイズと攻撃性に正の相関が認められ、さらに個体の攻撃性と活発さにも正の相関が認められた。以上より、国内のシグナルザリガニは、侵入暦に伴い行動特性が変化していることが示された。最後にシグナルザリガニ侵入集団の行動特性の変化をもたらす要因について考察する。


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