| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-196  (Poster presentation)

硫黄安定同位体比分析を用いたコウノトリにおける海産魚寄与の可能性

*塩田圭祐(兵庫県立大学院), 田和康太(土木研究所), 丸山勇気((株)建設環境研究所), 佐川志朗(兵庫県立大学院)

<div>我が国のコウノトリ野外個体群は1971年に絶滅している。その後、長い保護増殖の歴史を経て、兵庫県でコウノトリの再導入を2005年に実施して以来、関係者らの努力により飛来範囲および個体数は増加している。2018年1月7日現在、北海道、沖縄県を含む全国44道府県330市町村にまで飛来がみられ、個体数は122個体に達している(兵庫県立コウノトリの郷公園 2018)。コウノトリは極東地域にのみ生息する大型の肉食性鳥類であり、湿地生態系の食物連鎖の頂点に位置する。再導入個体の野外での餌動物としては39分類群が報告されており(田和ほか 2016)、魚類から昆虫類まで多種が含まれるが、海産魚についての記載はない。しかし一方で、国外での採餌観察例が少数ながら存在するとともに、絶滅前には海産魚類を食していた記録がある。本研究では、全国に存在する絶滅前個体の剥製から採取した羽毛の硫黄安定同位体比(δ34S)を用い、絶滅前個体群における海産魚の寄与を餌履歴が明確な飼育個体や再導入個体と比較することにより検討した。分析の結果、海産魚(主にアジ)を餌としている飼育個体のδ34S値は11.7~16.2‰を示し、淡水魚(主にドジョウ)を餌としている飼育個体のδ34S値は3.47~4.36‰を示した。一方で、野生絶滅前の個体は1.91~15.7‰の値を示した。以上より、野生絶滅前の個体群に対する海産魚寄与には大きな個体差があることが考えられた。発表では、δ13Cやδ15Nと併せて散布図を提示し、個体差およびその要因について考察する。</div>


日本生態学会