| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-231  (Poster presentation)

ギンメッキゴミグモの交尾器破壊に見られる個体差と経験の影響

*中田兼介(京都女子大学)

動物の配偶行動では、自らの利益を高めるために配偶パートナーにダメージを与える例がしばしば見られる。近年複数種のクモで発見された、メスの交尾器が交尾後に破壊される現象もその一つと考えられている。これは、メスの外雌器に付属する小突起である垂体が切除されることで、メスの将来の交尾能力が失われ、それによりオスの父性確保に繋がっているものである。
ギンメッキゴミグモ(Cyclosa argenteoalba)は、メスの交尾器破壊が見られる種の一つだが、1割ほどの頻度で交尾後に垂体を保持したままのメスが観察される。このようなメスは二個体目のオスと交尾することができるため、最初に交尾したオスにとっては父性確保の上で大きく不利になると考えられる。
本研究では、交尾器破壊が失敗する原因をオスの特性と関係づけて明らかにすることを目的とした。具体的には、破壊に失敗する原因として、1)オスの切除能力の個体間変異、2)オスが交尾を繰り返すことによる切除能力の低下、3)オスの加齢による切除能力の低下、4)配偶相手のメスの価値による切除行動の調整、の4つの仮説を検討した。
2015-2016年に63個体の亜成体オスと126個体の亜成体メスを野外で採集し、飼育下で成体にした。そして、一個体のオスを二個体の処女メスと交接させ、それぞれで交尾器破壊の成否を観察した。また、各回でメスの成体脱皮後の日齢と体重も記録した。その結果、1回目の交尾時に交尾器破壊に失敗したオスは2回目の交接時の間でも失敗しやすい傾向が見られた。これは仮説1)を支持する結果である。また平均失敗率を1回目と2回目で比べたところ、2回目の方がより高かった。これは仮説2を支持する結果である。一方、オスメスともに日齢、体重と失敗率との相関は見られなかった。このことから仮説3、4は支持されなかった。


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