| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-233  (Poster presentation)

アオウミガメ亜成体の大胆さ・臆病さと新奇探索行動の可塑性との関連

*工藤宏美(東京大学, 日本学術振興会), 内田桂(NPO おおいた EC), 小林博樹(東京大学), 佐藤克文(東京大学)

動物の行動には個体差があり、その行動の違いは個体の性格に由来すると考えられている。危険で恐怖を感じる状況や奇異な状況に対する動物の振る舞い(大胆さ・臆病さ)の尺度で性格は示される。動物の性格に関する研究は多くの分類群の動物で行われているが、ウミガメ類では行われていない。本研究では、大分県間越海岸の周辺海域で捕獲されたアオウミガメの亜成体を用いて、性格を特定し、新奇探索行動および摂餌行動の可塑性との関連性について調べるための刺激提示実験を水槽で行った。実験設定は、恐怖刺激を網、奇異な状況の刺激を鏡とした。まず、鏡が奇異な物になるか確認するため、水槽の一方の壁に、刺激なし、鏡にカバーをした状態、鏡のみの状態を設定し、刺激近傍におけるウミガメの滞在時間と鏡への接近時間を比較した。ここでは、鏡に顔を向けて鏡に映る自分を追尾した一連の行動を接近と定義した。その結果、何も無いときに比べ、物体があると滞在時間と接近時間は長くなるが、鏡のみ提示したときに滞在時間と接近時間が最長となった。次に、網が恐怖刺激になるか確認するため、網の刺激なしとありの状態で、刺激近傍に滞在した時間を比較した。その結果、網があると滞在時間が短くなった。最後に、網の有無の状況変化で個体ごとの新規探索行動と摂餌行動がどの程度変わるか、行動可塑性を調べた。その結果、網があると新奇探索行動は行わず、餌を食べるまでの時間が長くなった。これらの行動可塑性と性格との関連性を調べるため、鏡と網に反応した時間を変数とし、クラスター分析で大胆と臆病な個体に分け、2つの行動を比較した。新奇探索行動には性格間の差がなく、どの個体も恐怖刺激があると新奇探索行動を行わないことがわかった。一方、摂餌行動には差があり、恐怖刺激がある時、臆病な個体は大胆な個体より餌を食べるまでの時間が長く、摂餌行動の可塑性は、性格に関連することがわかった。


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