| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-247  (Poster presentation)

貝食性ホタルの陸貝追跡行動

*佐藤臨, 東信行(弘前大・農生)

スペシャリスト捕食者の多くはエサ生物が残す様々な痕跡を環境中から見つけ出し、これを追跡して捕食する能力を持つ。リクウズムシなどの貝食性スペシャリストでは陸産貝類(以下、陸貝)が匍匐した跡に残す粘液を追跡する、Trail-trackingによる効率的な餌探索を行っていることが知られるが、貝食性として知られる陸生ホタル類においてはこの追跡能力の存在は未だ確認されていない。またホタル科マドボタル属の幼虫は陸貝の捕食や植物上での活動に適応した形態を持ち、幅広い陸貝を利用できる捕食者と考えられるが、その選好性についても明らかでない。そこで本研究ではまず、貝食性ホタルがTrail-trackingによる陸貝追跡能力をもつかどうか、陸貝の粘液を幼虫に提示する選択実験により評価した。次に、マドボタル幼虫における餌種への選好性を見るため、形態の異なる複数種の陸貝を用いた選択実験を行なった。実験の結果、幼虫は水分がある方向を選ぶ傾向があったが、粘液のある場合には明らかに粘液の方向を選択し、その滞在時間は粘液の無い方に比べて長かった。幼虫による陸貝の種選択性については明確ではなかったが、樹上で活動する陸貝の粘液の方がより選択される頻度が高く、より長く滞在する傾向が見られた。幼虫は陸貝の粘液に触れた時のみ顕著な反応を示し、匂いを嗅いだ後に周囲を探索する様子が一貫して確認された。このため、マドボタル属幼虫は他の貝食性スペシャリストと同様の陸貝追跡能力を持ち、Trail-trackingによる効率的な陸貝探索を行っていると考えられた。また、樹上で活動する陸貝への反応が高く、これらの陸貝を選択的に捕食する可能性が示唆された。


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